13日の金曜美術館|アトリエ如瓶|ブログ・ヘッダ画像

このブログは、世の中の様々な「黙っていられん!!」ことを書くことを主旨としております。お客様や、お客様になるかも知れない方が読む可能性のあるブログではありますが、(書き手が勝手に決めたものながら)主旨を尊重し、常体文で記述して参ります。何卒お含みおきの上、お読みくださいますようお願いいたします。

女王陛下の007

皆様、こんばんは。館長&代表の如瓶です。

007シリーズの映画のTV放映に合わせて、これぞという作品の評を書くシリーズを続けているわけだけれど、今回は4作目と5作目をすっ飛ばして6作目について書く。
すっ飛ばした理由にさらっと触れておくと、4作目『007 サンダーボール作戦』は、ボンドガールをはじめ、出演した女性たちの妖艶さが光るものの、ウリだったらしい海中のアクションは今となってはあまり有り難みがない。要するに映画としてあまり面白みが感じられないし、案外ツッコむところも見当たらなかった。

5作目『007は二度死ぬ』は、邦題も何かカッコいいし、何より日本が舞台で、ボンドガールの浜美枝さんも美しく瑞々しいのだけれど、ショーン・コネリー演じるボンドが、敵の目に触れないよう日本人に扮するような無理な設定とか、どことなく歪んで見える日本の描写とか、どっちかというと腐すようなことしか書けなさそうなので採り上げなかった。
高校の同級生から、

「ロケで鹿児島を訪れたもののショーン・コネリーの背中にひどい湿疹ができて、ウチの父親が診察したそうだけど、湿疹も相まってボンドを演じることに不満全開だったそうだ」

なんてエピソードを聞いたように、ショーン・コネリーも今ひとつ生気がなかったようにも見えた。

前置きが長くなったが、新ジェームズ・ボンドを起用して制作されたのが、今回採り上げる『女王陛下の007』である。
2代目となったのが、ジョージ・レーゼンビーだったのだが、不評だったため、この作品でボンド役を降りることになってしまったという曰く付きの作品だったりする。
ブログを書くにあたってちょっとネット取材して驚いたのが、このジョージ・レーゼンビーはオーストラリア人。以前、次のジェームズ・ボンドにメル・ギブソンが起用か……なんて噂を聞いたときに、

「イギリス紳士じゃないんだから嘘だろ」

と思った(オーストラリア人だと思っていたけどメル・ギブソンはアメリカ人でした)のだが、このときすでにイギリス人じゃないボンドが存在したのだった。イギリスの息のかかった国だからOKだったのだろうか。

さて、久々にボンドを演じたジョージ・レーゼンビーを観てみたけれど、確かにどこか垢抜けないところがあるし、イケメン度も演技力も高くないという評判がうなずけなくもないなあと思ったのだが、格闘シーンやアクションシーンなどの体のキレは素晴らしい。
アクションシーンがつきもののシリーズだから、身のこなしが悪くなってきたショーン・コネリーの後釜として抜擢されたのがよく分かるし、そこを強調したシーンがよく出てくる。
監督も、過去6作で編集を担当してきたピーター・ハントが担当し、ボンド役刷新に伴って新風を吹き込みたいものの、シリーズの特性をよく分かっている人を起用して持ち味は残したいという制作側の意図も伺えるが、もともと編集をやっていた人がメガホンを執ったためか、過去の作品になかった斬新な編集が施されていて、ボンド映画のリニューアルを印象づけている。

敵方の拠点がスイスということもあって、シリーズとしては初となるスキーアクションのシーンが2度ほど盛り込まれ、これもまた新鮮。
この後の作品でも、帽子やゴーグルで顔を隠せるのでスタントを立てやすいという事情もあるからか、生身で展開するスキーでのアクションは度々出てくるけれど、カーアクションとは違ったスピード感があって、今も見応え充分だと思えた。

評判が良くなかった作品ではあるが、久々に観てみると、新ボンド起用という大きなターニングポイントを迎えたスタッフの意気込みや、スパイ映画らしいアクションシーンも盛りだくさんの、なかなか楽しめる映画じゃないか……と、評価を改めてしまったようなところもあり、今回採り上げた次第である。

さて、今回のイラスト。
今回はズバリ、ボンドガールであるトレーシーを演じたダイアナ・リグを描いた。

このシーンは、敵の本拠からスキーで逃げ出してきたボンドを、スケートリンクなどもあるレジャー施設のようなところでバッタリと再会したトレーシーが、救いを請うボンドを助けるべく、追ってくる敵の車から逃げようと乗ってきた車を自ら運転しているところである。
敵の車を撒くためにストックカーレースのコースに紛れ込むのだが、激しいカーチェイスのシーンにして、レースに参加しているプロのレーサーも顔負けのハンドルさばきを見せているのに、イラストにあるように始終口の脇から舌をのぞかせる余裕を見せているところが、エラくカッコよく見えたので、描かずにいられなかったのだ。
今度はブログの裏話だけれど、ここまで4点のイラストを描いてブログに載せてきたけれど、実は最初に描いたのがこのイラスト。
このイラストを描いてしまって公開したかったために、1作めからイラスト付きのブログにして辻褄を合わせてしまったというのが本音で、このイラストを描かなければ過酷なイラスト付きブログを書かなくて済んだのだが……。

一番いいシーンを……と、トレーシーの舌をのぞかせた顔が映っているシーンを、ひとコマずつ送りながら探しつつ、何度もこのカーチェイスのシーンを観たのだけれど、このダイアナ・リグのハンドルさばきや視線の配り方などが、あまりにもリアルなのに気づき、また感心してしまった。
このシリーズでもボンドをはじめ車を運転するシーンは何度も出てきて、明らかに背景を合成しているなあと思うことが多かったけれど、この作品のカーチェイスそのものに、ダイアナ・リグのハンドルさばきも相まって、単純に背景を合成したとは思えないリアリティがある。
チラホラと合成したのが分かるシーンもあるのだが、ボンネットあたりに配置したであろうカメラは、フロントグラスに映る照明の反射が時折車内を見えなくしている様子を捉えているし、左右に激しく動く車の動きに伴って背景も流れていくし、どうにもダイアナ・リグ自身が運転しているようにしか見えないのところが多いのだ。
何かの映画のメイキング映像などで、実は撮影用の車で牽引しているのを、早回しや編集で役者が運転しているように見せているような光景を観たことがあるし、撮影中に事故でもあれば映画そのものがボツなることもあるので、安全面からも役者に運転はさせないのだと思うのだけれど、実際に運転していたシーンが含まれていたのではないかという気がしてならない。
Wikipedia情報だけれど、実際スキーのシーンも、ジョージ・レーゼンビーはスキーが得意だったそうなのに、スタントを立てるくらい安全面には配慮していたそうなので、実際には運転してはいないというのが真相だろうが、運転の演技が素晴らしかったのか、ピーター・ハントの編集の手腕なのか、とにかくダイアナ・リグのちらっと見せる舌と一緒に堪能していただきたいカーアクションシーンだ。

窮地に追い込まれ、見事な運転で逃走を手助けしてくれるたのが美人ならば、ジェームズ・ボンドといえども惚れてしまい、立場を捨てて……あっと、これ以上は書かずにおこう。しかもあんなラストシーンになってしまうとは……。

秘密兵器やボンドカーなどはあまり出てこない作品だが、他にも見どころは沢山あり、評判のことは忘れてお薦めしたい作品だ。
ただ、TV版はストーリー上大事な部分も随分カットされていて、残念だったことも付記しておきたい。

女王陛下も出てこないし、ボンドが謁見するような話も出てこないのに、なぜこんなタイトルに? ……と思って調べてみたら、ストーリー上それほど重要とも思えないセリフ中で、このタイトルにあたる”On Her Majesty’s Secret Service“と出てきており、それが原作のタイトルに使われていたので、映画もこのタイトルになったという記述を見つけたが、タイトルについては何か釈然としない気持ちも含めて黙っていられませんでした。

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