13日の金曜美術館|アトリエ如瓶|ブログ・ヘッダ画像

このブログは、世の中の様々な「黙っていられん!!」ことを書くことを主旨としております。お客様や、お客様になるかも知れない方が読む可能性のあるブログではありますが、(書き手が勝手に決めたものながら)主旨を尊重し、常体文で記述して参ります。何卒お含みおきの上、お読みくださいますようお願いいたします。

007 ダイ・アナザー・デイ[終]

皆様、こんばんは。館長&代表の如瓶です。

また少し間を開けすぎてしまったけれど、タイトルに[終]と付けたのは、イラスト付き007シリーズについてのブログを最終回にするということで、映画のシリーズが終了するということではない。念のため。

テレビ東京での「007シリーズ20作品大放送!」の放映がとっくに終わってしまったのは、前回のブログでも書いたとおりだし、正直なところ、レコーダーを一時停止して、TVを前に座椅子に座って描くというスタイルにも疲れてきた。
私の使っている購入から7年以上経つT社のレコーダーは、15分で一時停止が解除されてしまい、熱中して描き進めている途中で、集中力が高まってきた頃に、地上波放送に戻ってしまったりすると、運筆を誤るほどではないけれど、少なからずギョッとするし、また再生して一時停止して……という段取りを経て、再び制作に戻る……という、これまで経験しなかった過酷な制作環境だったのだ。
そして、10年以上使い込んできた座椅子は、1時間も座っているとお尻が痛くなってくるし、そんな環境下で、集中力もとぎれとぎれになりながら制作を進めるのに、疲れた……という訳である。

イラストを鑑賞する皆様にはどうでもいい私の制作上の過酷さはさておき、今回選んだ作品は『007 ダイ・アナザー・デイ』。
本当は一つ前の作品の『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』も採り上げたかったのだが、テレビ東京が金曜日を中心としつつ、木曜日にもランダムに放映していたため、何作かを録画しそこない、『ワールド・イズ……』もその中の一作となってしまったのだ。
TVの放送としても20作目で最後だったし、見どころ満載の映画であることは分かっていたので、私のブログのシリーズとしても相応しいかと思えたのである。

この作品は、私が録画して最初から最後までを久々にきちんと観た007シリーズだった。
ティモシー・ダルトンのボンドには、好感をもっていたけれど、彼が2作に渡ってボンド役をやっている間に、何となく007シリーズは世界中の話題をかっさらうタイプの映画ではなくなったような印象を持つようになり、ピアース・ブロスナンにバトンタッチしてからは、あまり新しい映画を観なくなっていた私でも知っている俳優を起用して、巻き返しを図ろうとしている感じは伝わってきたけれど、初期のシリーズのファンだった私としては、関心の薄い映画になっていた。

が! 事前にTVで放映される事を知って、何気なく観てみる気になり、(ビデオデッキで)録画して観てみたところ、かつてのシリーズとは大きくテイストが変わっていたものの、大変見応えがあり、充分に楽しめる作品に生まれ変わっているように思え、驚いてしまった。
とにかく、ブロスナンに代わってからの一連の作品は、予算の大きさに比例する派手なアクションシーンが多く、007シリーズであることを忘れていても楽しめるレベルに達していて、それはこの作品にしてもそう。
そうかと思うと、ボンドのキザなセリフは健在で、ボンド・ガールのハル・ベリーとの出会いのシーンの掛け合いは、なかなか聞かせるし、新兵器・秘密兵器も多彩で、往年のシリーズの持ち味を損なっていない。
興行成績的にも、過去最高を記録したのだそうだ。

変化という点で一番印象的だったのは、東西冷戦が終結した現在、敵役として描かれているのが、日本の近隣国と思しき某国となっている点だった。英国の諜報部の活躍を描くためには、やはり新しい舞台が必要で、新兵器も進化していくように、敵役も変化したんだなあという感想を持ったのを思い出す。

キャスティングも、ジンクス役のハル・ベリーを始め、チョイ役で主題歌を担当したマドンナがお色気を振りまいたりして、贅沢な感じはあるが、敵役勢は幾らか地味。
画的に映えないと思ったのか、東洋人顔だったはずの敵方のボス・グスタフは、遺伝子操作により西洋人になりすますという理由で西洋人の役者に代わり、韓国系アメリカ人が演じる用心棒役・ザオは、スキンヘッドにカラーコンタクトを付け(同じく西洋人化しようとする過程の演出)、おまけに爆風で飛んできた幾つかのダイヤが顔に埋まっているという強烈な風貌で立ち回る点も印象的。
TV版のザオの声は、ガンダムシリーズのシャアを担当していた池田秀一氏が吹き替えていたのにも驚いた。

新兵器・秘密兵器にしても手抜かりはなく、クイッと回すと超音波を出し、装着した掌を当てるとガラスを粉々にしてしまう指輪などは、小物ながら随所で効果的に使われているし、ボンド・カーもBMWから英国車のアストン・マーチンに戻っただけでなく、ボディ全体に超小型カメラを仕込んであり、背景の映像をボディに映し出し、透明に見えてしまうという近未来的なシステムを装備し、これもまた効果的に使われていた。
このアストン・マーチンには、ショーン・コネリー時代のゴールドフィンガーにも装備されていた助手席のシート射出装置も装備されていて、まだそんな装備を? と思ったが、これも本来の目的(?)とは別な形で上手に使われていた。
この映画のこの車を見た知人が、「007にあんなSFはいらないと思う」と言っていたが、私は同じようなシステムが使われている戦場で使うスーツが出てくる話をゴルゴ13で読んでいたので、前述の指輪も含め、技術が高度になっているなあとは思ったものの、SFとまでは思わなかった。
まあ、ある程度実用化されているのかも知れないが、よくできた迷彩服程度の代物なのではないかと思うけれど。

車といえば、「俺たちだって同じようなのを持っているぞ」とばかりに、敵側もガトリングガンやロケットランチャーを搭載した車(ジャガーXKRのオープンカー)を用意していて、これを用心棒のザオが駆り、氷上のカーチェイスを繰り広げたりするところも斬新だった。ボンド・カーならぬザオ・カーといったところか?
氷上でのカーチェイスとなったのは、敵方の基地がアイスランドにあったからで、そんな寒いところにある基地で何故オープンカーを使っていたのかと理解に苦しむし、このカーチェイスのときのザオは、ゴーグルこそ着用していたが、頭はスキンヘッドのままで、すごく寒そうだった。アンタ、帽子も被れよ……と思ってしまった。
ボンド・カー同様にザオ・カーも英国車で、氷上で乗っても寒くないオープンカーであることを標榜したかったのだろうか?
…と、本当のところ、この運転中の寒そうなザオか、氷上のカーチェイスを描こうかと思っていたのだが、『女王陛下の007』で運転中の絵は描いたし、車も『ダイヤモンドは永遠に』で描いた。肖像権・著作権も気になったので、違うシーンを選んで描くことにした……のが、今回のイラスト。

ご覧の通り、ボンド・ガールであるハル・ベリーの初登場シーンを選んでしまった。
正直に書くと、ボンド・ガールとはいえ、人種がどうとかではなく、この人が出ている映画を探して観ようと思うようなことはない女優だったのだが、機械類や建物などをイラストにする事が多かったこの連作の中で、最後くらい有機的なフォルムのものを描きたかったというのが、理由の一つ。
そして、水面の描写を得意としている私だが、こんなふうにキラキラと水面が光っているところを描いたことはなく、これを少し黄色みのある紙のスケッチブック上で再現してやろうと思ったのが、選んだ理由の一つだった。
さらにもう一つ、雪景色(リビング・デイライツ)やロシア(ゴールデン・アイ)など、寒い雰囲気のイラストを2枚描いた後だし、今は季節も夏なので、温暖な雰囲気の絵柄にしたかったというのも理由の一つだった。
人物画としてみても、強い逆光で比較的小さめに収めているため、肖像権的な対処もできるし、スレンダーな水着姿の女性を描いただけに見えるので、著作権的にも問題は少なそうなのも都合が良かった。
スレンダーで、いくらか筋肉質だとはいえ、女性の水着姿などを描くのはそれなりに楽しいし、得意の水面を描くのだから、終始楽しく描けそうだと思っていたのだが、スケッチブック上での完成度や満足度は、想定の半分くらい。
水面のキラキラ感を強調するのが意図だったのだが、水面の明るい部分に少々色を乗せすぎてしまい、何度か一から描き直そうかと思ったが、人物の部分にしっかりと色を乗せてみると、どうにか水面の明るい部分として落ち着けることができた。
それにしても思っていた以上にキラキラしたところが際立たず、少々苦々しい記憶を呼び起こす最終作となってしまった。
ここに掲載した画像で見ると、縮小された画像となっているため、実物よりも少しだけキラキラ感がよく出ている感じに見えるが、私のイメージよりは数段劣る結果となった。
まあ、初めて描く光の状況だったのだが、縮小された画像で、概ね意図したとおりに仕上がったのだから良しとしたいところだが、個人的な達成感の低さを反映してか、Instagramでの「いいね」の伸びも良くなかったりして。
肖像権対策のために、似せる努力はかなり控えめにしたのだが、これがバッチリ似ていれば、もう少し「いいね」をもらえただろうか。

……と、作画に苦労しただけでなく、見どころ満載の映画を採り上げてしまったため、むしろ描くシーンを選びきれず、前回のブログから余計に日数がかかってしまった……と、言い訳をご容赦いただきたい。

現状、ブロスナンもこの作品を最後にボンド役を降り、ダニエル・クレイグに代わっているけれど、この新ボンドが私にはどうも……。ブロスナンまでで放映を終えてくれたテレビ東京に、放送時間の事情があるとはいえ、もう少しカットする部分を慎重に選んでほしかったとか、ランダムな放送スケジュールに対する不満のことは忘れ、感謝しておきたい……と、黙っていられませんでした。