13日の金曜美術館|アトリエ如瓶|ブログ・ヘッダ画像

このブログは、世の中の様々な「黙っていられん!!」ことを書くことを主旨としております。お客様や、お客様になるかも知れない方が読む可能性のあるブログではありますが、(書き手が勝手に決めたものながら)主旨を尊重し、常体文で記述して参ります。何卒お含みおきの上、お読みくださいますようお願いいたします。

007 ダイヤモンドは永遠に

皆様、こんばんは。館長&代表の如瓶です。

さて、新型コロナウイルスの感染が深刻な問題になっているけれど、それはそれとして007シリーズのブログにお付き合いいただきたい。
外出を控えるよう要請が出ているご時世なので、長文のブログは時間つぶしにピッタリかと。

ともあれ、今回は『007 ダイヤモンドは永遠に』について書きたい。
この映画には、ショーン・コネリーが最後に(もっと後に別な映画会社でボンド役をやったけど)演じた映画だし、描きたいシーンが見つかったからこのブログに採り上げる次第。

私がこの映画を観たのは、小学生の頃。もっと正確に書くなら、明日から中学生となり、校則で坊主頭にしなくてはならない夜だった。
小学生の頃からボンド映画のファンだった私は、描かれる大人の世界に憧れ、どこか目指す大人像としてボンドを重ねていたのだが、坊主頭になってしまい、それが随分と遠のいたような気がして、げんなりしたのを覚えている。
まあ、大人像として私が目指せるようなものじゃなかったのは、子供だから気付かなかったけれど。

唐突だが、寺沢武一氏作の『コブラ』というコミックがあるのをご存知だろうか。
コブラなる、宇宙を股にかける一匹狼の海賊が活躍するようなSF作品なのだけれど、今にして思うとこの作品には、ジェームズ・ボンドものの映画の影響が多数見られるように思う。
主人公・コブラの余裕綽々で不死身でユーモアの効いた言い回しなどはボンド像と重なるし、敵のアジトに乗り込んで秘密を暴こうとする様子も共通するものがあるし、セクシーなコスチュームを纏った女性も多数出てくる。
先にこのコミックを読んでいた私は、来る坊主頭になる日の夜を前に、番組宣伝でちらりと映った、高い露出度のセクシーな格好をした白人女性と黒人女性とボンドが格闘するシーンにハッとした。
作戦遂行のためにわざと刑務所に留置されたコブラが、独房を抜け出して秘密を探ろうとしているときに、白人と黒人の女性型サイボーグと格闘するシーンが描かれていたのを覚えていたのだ。
コミックと実写とか、コスチュームの違いなどはあったものの、このシーンから着想を得て描いたシーンなのだろうと、すぐにピンときたのだった。
オマケに、コブラとの格闘の末、「ゴールドフィンガー」のよろず屋と同様、黒人女性型サイボーグは、火花が迸る電気のケーブルで感電させられて破壊されるという念の入り様。
寺沢氏はこのシーンで、2作の007シリーズのシーンをパクっ……いや、流用していたのだ。

そもそも寺沢氏は、強くてカッコいい男が主人公の洋画が好きだったためか、『コブラ』の中で、クリント・イーストウッドやショーン・コネリーが吐いたセリフを時々流用しているのが分かる。
まあ、私もその手の洋画が好きで、多数観ていたから気付いたのだし、そうでなければ寺沢氏もコブラやゴクウのようなヒーローを産み出せなかっただろうけど。

……というわけで、コブラでも出てきたのと似たシーンが出てきたりすることも楽しみで観たのがこの映画だったわけである。

映画としては大ヒットしたらしいし、映画を見るより先に耳にしていた映画音楽の作曲家として有名なジョーン・バリーによる主題歌・主題曲も好きだったし、イチオシのボンド映画がこれ……と言いたいところなのだけれど、実はそうでもない。
前作「007は二度死ぬ」から「女王陛下の007」を跨いで4年ぶり復帰ということもあり、41歳となったショーン・コネリーは、少し中年臭さが強くなり、身のこなしも悪くなっていた。
先に書いた格闘シーンも、アクロバティックに攻撃を仕掛ける女性二人に弄ばれるかのような劣勢だったし、そもそも体格がポッチャリしていたし、以前の作品の頃よりも眉の太さや濃さが目立ち、正直あまり「カッコいい」とは思えない風貌になっていたのだ。
それを補うかのように、ボンドガールのジル・セント・ジョンは、聡明さ不足な感じはあるものの、高露出度でお色気たっぷり
ただの仲良しかと思っていたけれど、実はゲイだという設定の二人組の殺し屋の掛け合いは斬新だったし、宿敵ブロフェルドも、意味不明な女装を見せ、敵役のクセの強さも増強されていた。
秘密兵器という点では、目立ったものは出てこない印象だが、復帰のために上乗せされたショーン・コネリーのギャラに開発費・制作費を持っていかれたのだろうか。(スコットランド国際教育基金にギャラは全額寄付したそうだが。by Wiki)

先日放映された昼の映画では、(他の作品もそうだが)1時間半の放送枠に収めるために、随分と本編がカットされていて、この作品もそれで不可解な点があるのかと思ったが、ノーカット版でも説明不足な部分が幾つか指摘されているそうで、シリーズの持ち味はそれなりに盛り込まれており、コネリー復帰という目玉も手伝ってヒットはしたものの、映画としての評価は今ひとつかなあ……というのが私の評価だ。

さて、余分な話も含めて、映画そのものについては語り尽くした感じだが、今回はどのシーンのイラストなのか?

ジャーン! 今回はパトカーから逃げようとするフォード・ムスタング・マッハ1でした。

この作品では、過去にないほどカーアクションのシーンが長尺で盛り込まれており、これはなかなかの見もの。
私はこの、アメリカのカーアクションが売りの映画に時折出てきた、ムスタング・マッハ1という車が好きで、先に他の映画で存在を知り、その魅力に惹きつけられていたのだ。
今だって、購入して維持ができる経済力があれば、欲しいと思う車の一つだったりする。
敢えて書かなかったけれど、この作品を見たかったのは、自分が好きな車によるカーアクションが観られるからであって、ストーリー上、ボンドガールの持ち物なので、何も特別なところはないのだが、この間の放送でも充分に堪能させてもらった。

但しこの車、ヘッドライトが嵌っているフロントの部分が、フロントタイヤのある辺りからすぼまっているうえ、ボンネットの両端が盛り上がった形状になっていて、それがまたカッコいいと思えるところなのだけれど、非常に形をとるのに苦しんだ
しかも、車線変更中で車体は傾いているし、タイヤから路面のあたりは真っ暗だし、何度か他のシーンに変更しようかと思ったほどだった。
鉛筆で形を取り、透明水彩という絵の具で着彩に入る……という段取りで描いているのだけれど、着彩に入るまでの形取りに、「女王陛下の〜」のイラストを描いたときの4倍くらいは時間がかかった労作とあいなりました。
その甲斐あって、まずまず納得行く出来にはなったと思うけれど。

因みに、この主題歌も、カラオケで時折唄う得意曲であることも含め、黙っていられませんでした。

女王陛下の007

皆様、こんばんは。館長&代表の如瓶です。

007シリーズの映画のTV放映に合わせて、これぞという作品の評を書くシリーズを続けているわけだけれど、今回は4作目と5作目をすっ飛ばして6作目について書く。
すっ飛ばした理由にさらっと触れておくと、4作目『007 サンダーボール作戦』は、ボンドガールをはじめ、出演した女性たちの妖艶さが光るものの、ウリだったらしい海中のアクションは今となってはあまり有り難みがない。要するに映画としてあまり面白みが感じられないし、案外ツッコむところも見当たらなかった。

5作目『007は二度死ぬ』は、邦題も何かカッコいいし、何より日本が舞台で、ボンドガールの浜美枝さんも美しく瑞々しいのだけれど、ショーン・コネリー演じるボンドが、敵の目に触れないよう日本人に扮するような無理な設定とか、どことなく歪んで見える日本の描写とか、どっちかというと腐すようなことしか書けなさそうなので採り上げなかった。
高校の同級生から、

「ロケで鹿児島を訪れたもののショーン・コネリーの背中にひどい湿疹ができて、ウチの父親が診察したそうだけど、湿疹も相まってボンドを演じることに不満全開だったそうだ」

なんてエピソードを聞いたように、ショーン・コネリーも今ひとつ生気がなかったようにも見えた。

前置きが長くなったが、新ジェームズ・ボンドを起用して制作されたのが、今回採り上げる『女王陛下の007』である。
2代目となったのが、ジョージ・レーゼンビーだったのだが、不評だったため、この作品でボンド役を降りることになってしまったという曰く付きの作品だったりする。
ブログを書くにあたってちょっとネット取材して驚いたのが、このジョージ・レーゼンビーはオーストラリア人。以前、次のジェームズ・ボンドにメル・ギブソンが起用か……なんて噂を聞いたときに、

「イギリス紳士じゃないんだから嘘だろ」

と思った(オーストラリア人だと思っていたけどメル・ギブソンはアメリカ人でした)のだが、このときすでにイギリス人じゃないボンドが存在したのだった。イギリスの息のかかった国だからOKだったのだろうか。

さて、久々にボンドを演じたジョージ・レーゼンビーを観てみたけれど、確かにどこか垢抜けないところがあるし、イケメン度も演技力も高くないという評判がうなずけなくもないなあと思ったのだが、格闘シーンやアクションシーンなどの体のキレは素晴らしい。
アクションシーンがつきもののシリーズだから、身のこなしが悪くなってきたショーン・コネリーの後釜として抜擢されたのがよく分かるし、そこを強調したシーンがよく出てくる。
監督も、過去6作で編集を担当してきたピーター・ハントが担当し、ボンド役刷新に伴って新風を吹き込みたいものの、シリーズの特性をよく分かっている人を起用して持ち味は残したいという制作側の意図も伺えるが、もともと編集をやっていた人がメガホンを執ったためか、過去の作品になかった斬新な編集が施されていて、ボンド映画のリニューアルを印象づけている。

敵方の拠点がスイスということもあって、シリーズとしては初となるスキーアクションのシーンが2度ほど盛り込まれ、これもまた新鮮。
この後の作品でも、帽子やゴーグルで顔を隠せるのでスタントを立てやすいという事情もあるからか、生身で展開するスキーでのアクションは度々出てくるけれど、カーアクションとは違ったスピード感があって、今も見応え充分だと思えた。

評判が良くなかった作品ではあるが、久々に観てみると、新ボンド起用という大きなターニングポイントを迎えたスタッフの意気込みや、スパイ映画らしいアクションシーンも盛りだくさんの、なかなか楽しめる映画じゃないか……と、評価を改めてしまったようなところもあり、今回採り上げた次第である。

さて、今回のイラスト。
今回はズバリ、ボンドガールであるトレーシーを演じたダイアナ・リグを描いた。

このシーンは、敵の本拠からスキーで逃げ出してきたボンドを、スケートリンクなどもあるレジャー施設のようなところでバッタリと再会したトレーシーが、救いを請うボンドを助けるべく、追ってくる敵の車から逃げようと乗ってきた車を自ら運転しているところである。
敵の車を撒くためにストックカーレースのコースに紛れ込むのだが、激しいカーチェイスのシーンにして、レースに参加しているプロのレーサーも顔負けのハンドルさばきを見せているのに、イラストにあるように始終口の脇から舌をのぞかせる余裕を見せているところが、エラくカッコよく見えたので、描かずにいられなかったのだ。
今度はブログの裏話だけれど、ここまで4点のイラストを描いてブログに載せてきたけれど、実は最初に描いたのがこのイラスト。
このイラストを描いてしまって公開したかったために、1作めからイラスト付きのブログにして辻褄を合わせてしまったというのが本音で、このイラストを描かなければ過酷なイラスト付きブログを書かなくて済んだのだが……。

一番いいシーンを……と、トレーシーの舌をのぞかせた顔が映っているシーンを、ひとコマずつ送りながら探しつつ、何度もこのカーチェイスのシーンを観たのだけれど、このダイアナ・リグのハンドルさばきや視線の配り方などが、あまりにもリアルなのに気づき、また感心してしまった。
このシリーズでもボンドをはじめ車を運転するシーンは何度も出てきて、明らかに背景を合成しているなあと思うことが多かったけれど、この作品のカーチェイスそのものに、ダイアナ・リグのハンドルさばきも相まって、単純に背景を合成したとは思えないリアリティがある。
チラホラと合成したのが分かるシーンもあるのだが、ボンネットあたりに配置したであろうカメラは、フロントグラスに映る照明の反射が時折車内を見えなくしている様子を捉えているし、左右に激しく動く車の動きに伴って背景も流れていくし、どうにもダイアナ・リグ自身が運転しているようにしか見えないのところが多いのだ。
何かの映画のメイキング映像などで、実は撮影用の車で牽引しているのを、早回しや編集で役者が運転しているように見せているような光景を観たことがあるし、撮影中に事故でもあれば映画そのものがボツなることもあるので、安全面からも役者に運転はさせないのだと思うのだけれど、実際に運転していたシーンが含まれていたのではないかという気がしてならない。
Wikipedia情報だけれど、実際スキーのシーンも、ジョージ・レーゼンビーはスキーが得意だったそうなのに、スタントを立てるくらい安全面には配慮していたそうなので、実際には運転してはいないというのが真相だろうが、運転の演技が素晴らしかったのか、ピーター・ハントの編集の手腕なのか、とにかくダイアナ・リグのちらっと見せる舌と一緒に堪能していただきたいカーアクションシーンだ。

窮地に追い込まれ、見事な運転で逃走を手助けしてくれるたのが美人ならば、ジェームズ・ボンドといえども惚れてしまい、立場を捨てて……あっと、これ以上は書かずにおこう。しかもあんなラストシーンになってしまうとは……。

秘密兵器やボンドカーなどはあまり出てこない作品だが、他にも見どころは沢山あり、評判のことは忘れてお薦めしたい作品だ。
ただ、TV版はストーリー上大事な部分も随分カットされていて、残念だったことも付記しておきたい。

女王陛下も出てこないし、ボンドが謁見するような話も出てこないのに、なぜこんなタイトルに? ……と思って調べてみたら、ストーリー上それほど重要とも思えないセリフ中で、このタイトルにあたる”On Her Majesty’s Secret Service“と出てきており、それが原作のタイトルに使われていたので、映画もこのタイトルになったという記述を見つけたが、タイトルについては何か釈然としない気持ちも含めて黙っていられませんでした。

007 ゴールドフィンガー

皆様、こんばんは。館長&代表の如瓶です。

ふう、どうにか週イチペースで着手。頑張ってイラストを仕上げたお陰だったりする。

今回は、007シリーズ3作目となる『ゴールドフィンガー』について書こう。
結局、これぞというものを選んで……とか書いて書き始めたものの、漏らさず採り上げているけれど、やはりショーン・コネリーのボンドが好きだし、私の生まれる前の作品を気に入ってしまうのは、私が懐古趣味だからかも知れない。

さておき、1作目、2作目と映画がヒットして、予算も集まりやすくなったからか、どのシーンにも、スタッフが張り切って制作にあたった勢いのようなものが感じられるのがこの作品。
ボンドガールや秘密兵器、個性的な敵方に付け加え、様々な仕掛けを施したボンドカーも登場したのも潤沢な予算のお陰なのか、ともあれシリーズのウリとなる要素が揃ったのもこの作品からだった。

前作のボンドガールは、すぐに女優さんの名前を覚えてしまうほど印象的だったが、この作品のボンドガールは少し出番が控えめ。オナー・ブラックマン扮するプッシー・ガロアはなかなかのグラマー美人なのだが、干し草小屋でボンドと投げの打ち合いをしたりなど、猛々しい役回りがイメージとしてはマイナスな印象があった。

映画のタイトルにもなっている「ゴールドフィンガー」とは、金に異常な執着を見せ、金のためならどんな悪事にも手を染め、人の命など屁とも思わない残忍さも持ち合わせたでっぷりした企業家の名前なのだが、その風貌も相まって、どこか憎めない印象もある。

敵方として書き落とすわけにはいかないのが、ゴールドフィンガーの用心棒で召使い(?)の、Oddjobという日系人。ハロルド坂田という、ハワイ系日本人が演じており、もともとは重量挙げの選手やらプロレスラーなどやっていた人らしい。もともと役者じゃないからか、原作でそうなっているからなのか、口がきけない設定になっており、それがまた不気味な存在感を放っている。
ボンドを若山弦蔵氏が、ゴールドフィンガーを滝口順平氏が声を当てた吹き替えでは、オッドジョブではなく「よろず屋」と呼ばれているが、Odd jobを調べてみると「雑用」という意味があり、古い吹き替えでは「よろず屋」となっていたのが肯ける。
ゴルフボールを握りつぶすほどの怪力で、いつもかぶっている山高帽のつばには円形の金属(刃物?)が仕込んであり、武器として使っているあたりも個性的。当てれば人を殺せるような金属を仕込んだ帽子をいつもかぶっていては、危なくてしょうがないと思うのだが。

……と、ここまで読んできて、「ひょっとして今回のイラストは……」と思った方、正解です。今回は、また敵役だけれど、「よろず屋」を描きました。

007シリーズでは、敵方の親玉の用心棒にあたる屈強な男が頻繁に登場するけれど、そんな中で、この「よろず屋」が私は一番好き。
日系人だからというのは大きな理由ではないのだけれど、怪力の殺し屋でもある反面、時折見せるニヤッという笑顔はどこか人懐っこいものを感じるし、ボスであるゴールドフィンガーから、金塊を保管してある巨大な金庫に時限装置を仕掛けた原爆とともに、ボンドや他の手下と共に閉じ込められ、見捨てられたことが分かっているはずなのに、ゴールドフィンガーの作戦を達成するために、涙ぐましい忠誠心を見せるあたりは、久しぶりに観てみてグッと来るものがあった。(観た方には分かるような書き方にしてあります)

このシーンのちょっと前から、ボンドとの格闘シーンがあるのだが、金塊を投げつけられても胸で弾き返し、顔を殴られてもニヤッと笑ってみせるなど、その屈強さの描かれ方もいいし、投げ飛ばして倒れ込んだボンドに対して、「さあ立て。もっと楽しもうぜ」というジェスチャーをみせたりなど、このシリーズの「屈強な敵役」の中でもベスト3に入る強さなのではないだろうか。
ただ、(ちょっとネタバレ)イラストの背景の左側にも描いておいた金属のパイプの間に挟まった帽子を取ろうとした際に、ボンドが高圧電流ほとばしる切断されたケーブルを金属のパイプに押し当てて感電させることによって、「よろず屋」は絶命してしまうのだけれど、打ち上げ花火が暴発したかのように激しい火花が飛び散らせているのは少々やりすぎな感じがする。
不死身とも思えるこの男を絶命されるためにはこれくらいやらなきゃ……という演出なのは分かるが、人が感電したことによってほぼ画面全体が白くなるほどの火花は、多分発生しないと思う。
Wikipediaでもこのシーンについて、ハロルド坂田氏は仕込まれた激しい火花のせいで火傷をしたらしいが、カットがかかるまで手を離さなかったという裏話を掲載している。強い忠誠心は役柄だけではなかったようだ。

……とまあ、壮絶な最期まで含めて最もお気に入りの敵役の「よろず屋」が今回のイラストでした。

もう一つだけ、ツッコミを。
ストーリーの前半で、もともとゴールドフィンガーの手下だった女性をボンドがたらし込み、ベッドインし、冷蔵庫へ冷えたシャンパンを取りに行こうとしたところを、「よろず屋」の一撃で昏倒させられ、目を覚ましたボンドが、ベッドインした女性が全身隅々まで金粉を塗られて窒息死しているのを発見し、唖然とする有名なシーンがある。
ほぼ全裸で金粉を塗られた美女がベッドで絶命しているシーンは、この映画の前半の最も印象的なシーンと言えるだろうけれど、映画では描かれていないボンドが昏倒している間のことを考えると、なかなか凄まじいものがある。
「よろず屋」が、ボンドを昏倒させたのち、ベッドインしていた女性のところへ行って、金粉を塗ったのだろうけれど、まさか女性の意識があるうちに、刷毛あるいは素手でペタペタと金粉を塗ったわけではないだろうし、ボンド同様、一撃で昏倒させて意識をなくした状態で金粉を塗ったにしても、その様子は猟奇的を通り越して変態的だ。
映像で確認できる限り、シーツなどに金粉が付着しているようでもなかったので、女性の皮膚だけに丁寧に丁寧に金粉を塗ったのかと思うと、ますます異常な光景だし、金粉を塗り終えた「よろず屋」が、ニヤッと笑ったりしたのかと想像すると、まあ映像化しないのが正解だったかという気もする。
「よろず屋」ファンの私としては、ゴールドフィンガーから命じられるまま、いやいやながら事に及んだと思いたいのだけれど。

シャーリー・バッシーの唄う主題歌も有名で、現在放映中のバラエティーでもイントロが使われていたりするけれど、『ロシアより〜』同様、この主題歌も私のカラオケのレパートリーだったりすることも含め、黙っていられませんでした。