13日の金曜美術館|アトリエ如瓶|ブログ・ヘッダ画像

このブログは、世の中の様々な「黙っていられん!!」ことを書くことを主旨としております。お客様や、お客様になるかも知れない方が読む可能性のあるブログではありますが、(書き手が勝手に決めたものながら)主旨を尊重し、常体文で記述して参ります。何卒お含みおきの上、お読みくださいますようお願いいたします。

トル

何度も仕事の話は書きたくないと書いていながら、何度か仕事の話を書いているけれども、今日も仕事の話。

月曜の終業時間近く、営業さんがデザインの仕事の話を持ってきた。

「今日テキストデータが届くんですけど、24日中に講演会のチラシのデザインを二案提出して欲しいそうですが、できますか?」

つまり営業さんは、私にそれが出来る能力があるのかどうかを聞いているのではなくて、飛び石連休明けの一日でチラシのデザインを二案作る時間があるかどうかを聞いているのである。

「先ほど、大型のを受け取りましたが、納期はもう少し先なので、その日にその仕事をする時間は取れます」

私も、やる自信がないとは言えないので、スケジュールに関してのみ、空き具合を伝えた。

もう少し具体的な内容を書くと、結婚や出産などの事情で離職した看護師さんが、復職するにはどうしたらよいか……についての講演会があり、急遽そのチラシを作ることになり、私にお鉢が回ってきたのである。

「進行にも確認をとっておきますので、どうかよろしく」

営業さんは去っていき、私は大まかな指示書をノートに挟み、とりあえず持ち帰り、プランを温めることにした。

……で、今日。

「講師の写真が届いてますのでそれを……あと、看護師さんのイラストなど、素材集とかから見つくろってあしらって下さい」

……と営業さんから指示。
言われるまでもなく、一案については私もそうするつもりだった。
ただ、丸一日このチラシ作りに時間を割けるはずだったので、解像度が高くて可愛い(女性の)看護師さんの写真でも見付かれば、それを全力で細密に鉛筆か何かで描いて、二案目に使ってみようというハラがあった。
鉛筆で細密に描いた絵であれば、何となくアカデミックな雰囲気が漂い、幾分学術的な要素を含む講演会のチラシにあしらうにはバッチリ…と、考えたのだ。
長年に渡って研鑽してきたデッサン力を、商業美術であるデザインの分野に注ぎ込むのは少々不本意なのだが、世にはびこる素材集の中に、「これこれこういう意図に相応しい絵柄」というのはなかなか見付からないし、描く時間さえあれば、デザインする自分の意図に相応しいイラストを用意することが出来るのだが、私は派遣であり、時給であり、万一採用にならなかった場合、

「時間を余分にかけてこの結果かよ」
「オメエがヘタクソだから使われなかったんだろ」

……と、罵詈雑言を浴びるのは必至。
派遣ではなくてもデザイナー自らがイラストを描くのは、かなりリスキーなのだが、勝機を感じていた私は、画材まで用意してデザイナー自らイラストに、果敢にチャレンジしたのだった。

午前中で、素材集のイラストを使った1案はササッと仕上げた。
素材集の看護師さんのイラストは、「子供向けなぜなに本」に出てくるような漫画タッチのものばかりで、唯一見付かったオトナの雰囲気のあるイラストを採用し、タイトルを横組みにしてレイアウト。
唯一見付かったイラストでハマっていなくは無いが、50mm四方くらいに小さく扱うならまだしも、A4サイズの半分にも及ぶスペースを担うには、やはり迫力不足。
やはり私のデッサン力を奮う時のようだ。

食事を済ませ、再び素材集から看護師さんの写真を探す。

「うお♥」

意外にも、私好みのクセ無くバランス良くまとまった顔立ちのモデルさんが看護師に扮した写真がすぐに見付かった。
まるで、この時の私の必要性に応えるために生まれ、看護師に扮して素材集の中に収まっていたモデルさんであるようにすら思えた。写真の解像度にも不満はない。

素材集からはショボいイラストしか使えない状況で、望み通りのモデルが見付かったのだから、後は私の腕次第。ガンガン描くしかない…と思ったのだが、大変なことに気付く。

「うわ、スケッチブックを忘れた!」

鉛筆による細密画は、大体何の紙に描いてもサマにならないことはないが、やはり鉛筆のタッチが活きる凹凸のあるスケッチブックを使って描きたかった。
仕方がないので、プリンタに入っていた上質紙に、0.3mmのシャープペンシルを使い、ハッチング(細い線による間隔の狭い平行線を重ねて陰影を付ける技法)を使う方向で、別な技術で絵作りをしていくことにした。
この技法は、女性の顔などの柔らかみを表現したいときに使うのは少々難しいのだが。(汗)

しばし描画に没頭していた…と思ったら、二時間近くが経過している。
こうして我に返るとき、自分でも不思議に思うのだが、絵はなかなかリアルに……細密に描けている。
正直、「いつの間にこうなったんだろう」……と思う。

出来上がった絵を、スキャンして貰い、それを待つ間にタイトルを縦組みにしたレイアウトでデザインを進める。
やがてスキャンが仕上がり、レイアウトにはめ込むと、イメージ通りの仕上がり。

「やった! これはイタダキだ!!」

……と、モニタの前でほくそ笑み、PDFデータに書き出し、メールでお客さんに送信し、前述の納期に余裕のある仕事に、上機嫌で取りかかる私であった。

終業時間近く、進行(業務全般の進行管理担当者の意)さんにファックスを手渡される。
内容を見た私は、肛門から内蔵の全てが飛び出すかと思うようなショッキングな内容を目にする。
ファックスには、でっかく「イラスト トル」の指示。然も、乗り気じゃなかった出来合いのイラストを使った第一案の方に指示が入っている。
私の渾身の描写は箸にも棒にもかからんというのか?

よくファックスに目を通してみると、

「講演の内容は看護師限定の内容と言うわけではないので、イラストは入れないでくれと講師からの指示があったので、講師の写真を大きく入れてください」

……とのこと。

ぶわっかもぉおぅん!! 最初から言わんかいっ! そっちからの指示も「看護師さんのイラスト」だったじゃないくわっ!!

「いい感じのイラストを入れて頂いて、こちらも感激していたのですが」

……と、付記も。

そんな付け足し、何の慰めにもならんわいっ!!
もうみんな消えて無くなっちゃえ~~っ!(←41歳)

……というわけで、渾身の看護師さんのイラストは世に出ないことになったので、ここで世に出します。
時給の勤務時間に描いたものではあるが、著作権は私にある。過程の制作物の著作権を譲るような契約はしていないもんねーだ。(←41歳)

どんな描写をするとこう見えるのか……ご理解頂くために要所のクローズアップも掲載します。

とくとご覧あれ。

【全体図】
【全体図】
【目のクローズアップ】
【目のクローズアップ】
【鼻と口のクローズアップ】
【鼻と口のクローズアップ】